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「世界で20秒に1本の頻度で足が切断されている!」
これは2007年に米国の医学雑誌に掲載された衝撃的なタイトルです。
日本に比べ糖尿病患者が多いとは言っても、20秒に1本ということは1日にすると4320本、1ヶ月では12万9600本、1年では150万本以上です。
足の切断に至るまでの元凶は「糖尿病」へという見解に世界は変化しています。
糖尿病の合併症といえば、眼や肝臓など上の方の臓器に気をつけている方が多いのではないでしょうか。
その根底には脳や他の臓器に比べ「腰から下は安全だろう」という意識が皆さんにあるからです。
しかし、想像してみてください。
足がなくなってしまったら・・・。
末梢動脈疾患(PAD)と足の切断に至るまで
ご説明が遅れましたが末梢動脈疾患(PAD)とは、足に動脈硬化が起こり、血管が細くなったり詰まったりして十分な血流が流れなくなる病気です。
この病気は糖尿病による合併症の中でも、内臓や脳と同じくらい発症すると危険なのものです。
病気が進行すると、歩けないほどの激痛に苛まれ最終的には足を切り落とさなくてはなりません。
また動脈硬化は足以外にも派生しますので、脳の障害にもつながります。
糖尿病患者の方は傷が治りにくいのが特徴ですが、足に傷を負った場合、その部分は腐りやすくなります。
これは「壊疽(えそ)」と呼ばれるものですが、壊疽した部分のバリアはとても脆いものとなります。
そこから黴菌が侵入し、感染症を起こしてしまいます。
感染症がひどくなるということは壊疽も広がりやすく、抗生物質も効きづらくなります。
それが全身に広がり、致死レベルにもなりかねません。
それを防ぐために壊疽した部分を切断することにより、足の切断へとつながるのです。
足の切断と言っても場所も様々なのですが、腰から下の広範囲の場合もありますし、指1本の場合もあります。
指1本の場合は、見た目では靴を履いていればわからないかもしれませんし、みじかな糖尿病患者さんの中にすでに切断している方もいるかもしれません。
指1本と言っても、失ってしまうと歩くのがとても困難になるのです。
爪が剥がれたことはありませんか?
爪ですら失うとその部分には力が入らなくなるのですから、指1本であれば階段やバランスを取ることにも大きく影響します。
私の娘が初めて1型糖尿病だと診断された時、左ももの裏にとびひができたことがきっかけでした。なかなかとびひが治らず、ある日足を引きずり出しました。
救急病院へ行きましたが、対処できるレベルではなく大学病院へ。
そこでは壊疽が広がっている箇所の手術となりました。
「どう考えてもおかしい」と思った私は糖尿病の検査を依頼しましたが「こんなに痩せているのに糖尿病な訳がない」と医師に1度は断られましたがなんとかお願いし検査をしてもらいました。
すると400という数字の高血糖が判明し、そのまま足の手術と1型糖尿病のダブルの入院となりました。
ラッキーなことに、早期発見もあって壊疽の摘出だけですみました。
あの時娘は7歳でしたが、今でも思い出すと「もしかしたら足を切断していたかもしれない」と大きな恐怖が襲ってきます。
PADの効果的な予防方法
一言で言ってしまうと「糖尿病の血糖コントロールをしっかりすること」に尽きるのですが、もう少し掘り下げると
PDAを予防する最大の戦略は「糖尿病によって引き起こされる動脈硬化を予防すること」になります。
- 血糖コントロールの安定。
- 血圧コントロールの安定。
- コレステロールや中性脂肪に気をつける。
- 適度な運動。肥満にならない。
- タバコを吸わない。
- 糖尿病による合併症がある場合は、より注意する。
以上が大切な予防のポイントなのですが、それと同時に
早期発見が大切なポイントです。
PADでは、自覚できる症状が現れているもっと前の段階で発症しています。
PADの早期発見にはある検査が必要なのですがABI(足関節膝上腕血圧比)という、肘と足首の両方の血圧を測り、その血圧比で動脈硬化を測るという検査です。
腕の血圧に対して足の血圧が1割の低下、つまりABIが0.9未満であるとPADの可能性が高くなるというものです。
決して自己判断で安易に処置はしてはいけませんが、PADで後悔しないために足を守る手段として下記にまとめました。
- 足に関心を持つ。
- 足の異常に気が付いたらすぐに受診する。
- 足を乾燥させないように保湿する。
- 爪切りをこまめにする。
- サイズの合った靴を履く。
- 足を衛生的に保つ。
今回はPADについて詳しくお話ししました。
見落としがちな箇所だからこそ、気をつけることを心がけ健康な足でいつまでも元気に歩きましょう。
- 血糖コントロールの安定。
- 血圧コントロールの安定。
- コレステロールや中性脂肪に気をつける。
- 適度な運動。肥満にならない。
- タバコを吸わない。
- 糖尿病による合併症がある場合は、より注意する。
ことを心がけ
- 足に関心を持つ。
- 足の異常に気が付いたらすぐに受診する。
- 足を乾燥させないように保湿する。
- 爪切りをこまめにする。
- サイズの合った靴を履く。
- 足を衛生的に保つ。
上記のように足を守る。
PADの疑いがある場合はABI(足関節膝上腕血圧比)という検査を受ける。